*メールマガジン「おおや通信6」 2009年7月15日
自分が子どものころには聞いたこともなかったのに、やたら多くなった病気の一つがアトピー性皮膚炎です。肌が乾いてささくれ立ち、かゆくてつらそうな病気です。
大谷小学校で生徒の健康状態を調べたところ、22人の1年生のうち、なんと半分の11人がアトピー性皮膚炎と診断されました。全校でも89人のうち21人、4人に1人近くがこの病気でした。ごく軽い症例も含めているとはいえ、これほど多いとは思っていませんでしたので驚きました。
文献を見ても、「アトピーの原因は不明」と書いてあるだけです。遺伝的要因、花粉やダニの影響、有害化学物質説、合成洗剤との関わり、ストレス説などが列挙してあるものの、それぞれについてどう考えるべきかをきちんと書いてあるものが見当たらず、戸惑うばかりでした。
そんな中で、長い間アトピー患者の治療にあたってきた高雄病院(京都市)の江部康二・副院長の講演録は、とても説得力がありました。江部氏は、原因についてはいろいろな仮説があるが、「歴史的に(はっきりしている)たった一つの事実は、高度経済成長以前は(アトピーが)少なかったし、治っておった」ことだ、と指摘しています。そしてこの時期、1960年代から、日本人の食生活が急激に変わり始めたことに言及しています(「完全米飯給食が日本を救う」〈東洋経済新報社〉第3章に講演録)。
身近で採れたものを食べていた日本人の伝統的な食生活は、この時期から激変しました。さまざまな食品が大規模な流通ルートに乗って出回るようになり、インスタント食品も次々に登場しました。それに伴い、食品添加物や防腐剤が大量に使われるようになりました。農薬の大量散布が始まったのもこの時期、合成洗剤が普及し始めたのもこの時期です。
一つひとつは健康にすぐ害があるとは言えないにしても、これらが次々に体内に入り込んだために、人間の自然治癒力では対処しきれなくなり、それが皮膚炎という形で表れたのがアトピーと考えるべきではないか、というのが江部氏の主張です。
従って、高雄病院では食生活の改善や漢方薬の服用、鍼灸を施すといった方法で人間の自然治癒力を高めることを基本的な治療方針にしているとのことです。ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)を塗ってかゆみを止めることも患者によっては必要としながらも、ゆっくりと減らしていくという立場です。
アトピーは、単に「皮膚がかゆくてつらい」ということにとどまりません。荒れた肌は、対人関係にマイナスの影響を及ぼし、性的に成長するにつれて自然な異性関係が築かれるはずなのにそれを妨げます。われわれが想像する以上に強烈な影響を及ぼしていると考えます。
毎日、何を食べるのか。それが10年、20年と積み重なった時に体にどういう影響を及ぼすのか。現代科学の力をもってしても、それを解き明かすのは不可能ですが、さまざまな「新しい病気」という形で、われわれの体は警告を発してくれているのではないでしょうか。
(*江部康二氏の肩書は講演録が作られた当時のものです。)