冬のカラス
*メールマガジン「小白川通信 41」 2016年3月6日
あらゆる鳥の中で
カラスよ お前は一番の嫌われもの
春 木々が柔らかい光を浴びて芽吹き
里山がモスグリーンに染まるころ
お前は黒い一筋の線となって横切る
なんと目障りなことか
夏 木々が葉裏を白く返してそよぎ
照り付ける日差しの中で育つころ
お前は黒い染みのように鎮座している
なんと暑苦しいことか
秋 吹き渡る風に稲穂が波打ち
山々がうっすらと色づき始めるころ
お前は人間の残り物を黙々とついばむ
なんと見苦しいことか
けれども 冬
荒れ狂う吹雪をものともせず
お前は雪原高く舞い上がり
白い大地を睥睨(へいげい)しつつ飛んでゆく
カラスよ お前は美しい
*写真 姉崎一馬氏が撮影、提供