知事の夢物語のために億円の血税が使われた
権力者は孤独である。総理大臣にせよ、県知事にせよ、あらゆる問題について最終的には一人で決断しなければならない。そして、その決断がどのような結果になろうとも、すべての責任を負わなければならない。
その重圧は、時には耐えがたいほどだろう。だからこそ、優れた政治家は「ブレーン(知恵袋)」を持つ。経済や外交の専門家、情報のプロや文化人を抱え、折に触れてその知恵に頼る。そうしなければ、孤独に耐えられないからだ。
3期10年余りの吉村美栄子・山形県知事の県政運営を見ていて思うのは、「この知事にはブレーンがいない」ということである。ブレーンなき政治は何をもたらすか。6月29日付のコラムで取り上げた「フル規格の新幹線整備構想」はその答えの一つと言っていい。
政府も地方自治体も膨大な借金を抱えている。医療と福祉の負担は膨らむばかり。子どもが減り、高齢者があふれる社会でどのような道を切り拓いていくのか。私たちの社会は未知の海に漕ぎ出し、荒波を乗り越えて行かなければならない。
そういう時代に「東北に二つの新しい新幹線を造ろう」と呼びかけることがどれほど「お門(かど)違いの政策」か。フル規格の新幹線の建設費は1キロ100億円前後、100キロで1兆円もかかる。冷静に考えれば、中学生でも「とても無理な話」と分かる。
なのに、吉村知事には冷静にそう説くブレーンがいない。「フル規格の奥羽・羽越新幹線の実現」に向かってひた走る。地元の山形新聞も経済界も「オール山形で夢を叶えよう」と、熱にうかされたように叫んでいる。
新聞や経済人が叫ぶだけなら、何も問題はない。だが、県知事が唱えるとなると、話は違ってくる。新しい事業が始まり、県職員が走り回り、私たちの血税が費やされていくからだ。
吉村知事が2期目に入った2013年(平成25年)から、フル規格の新幹線整備運動のためにどのくらいの県費が投入されたのか。図1はその一覧グラフである。最初の年は「新幹線推進県民運動事業費」と名付けられ、202万円と小さな予算だった。それが翌年は484万円、翌々年は819万円と、倍々ゲームのように膨らみ続けた。
3期目初年の2017年(平成29年)には3162万円に達し、以後、ほぼ同額の予算が計上されている。総額1億2112万円。知事が唱え、地元の山形新聞があおり、市町村長や経済人も加わる「県民運動」に多額の県費が投じられた。
いったい、どのように使われているのか。その実情を調べていくと、嘆きは一段と深まる。表1は支出の主な内容である。2014年3月に山形市で、京都大学の藤井聡教授を講師に招いて初めてのシンポジウムが開かれた。教授は「フル規格新幹線の整備によってビジネスが生まれ、人が定着する。山形の人口減少に歯止めをかけるだけでなく、増加に転じさせることができる」と語った(同年3月21日付の山形新聞記事)。
その藤井教授は4年後の講演では「財務省は『山形にはミニ新幹線がある。まだ何もない四国や山陰に比べ、優先順位は低い』と言って簡単には(奥羽・羽越新幹線を)認めない」と語った。そこまではいいが、続いて「仙山線ルートに新幹線を通してはどうか」と、突拍子もない提案をした(河北新報の2018年9月3日付社説)。なんとも無責任な学者である。
それでも、講演会くらいなら費用は少なくて済む。予算が膨らみ始めたのは、2015年から外部の専門家を招いて「ワーキングチーム」を発足させ、フル規格の新幹線整備に向けて本格的な検討を始めたあたりからだ。旅費や謝礼で費用がかさむ。表2はそのチームのメンバー表である。運輸政策研究機構は旧運輸省系の外郭団体、エム・アール・アイリサーチアソシエイツは三菱総研系のシンクタンク、フィディア総合研究所は荘内銀行が作ったシンクタンクだ。
チームには、人口の減少を示す県内の地域ごとのデータや鉄道や空路、車を使った県民の移動データなどが示され、議論が交わされるのだが、情報公開された文書を読むと、データの膨大さに比べて議論があまりにも空疎なことに脱力感を覚える。誰も「実現の展望」を見出せないからだろう。
専門家らしい指摘もある。「山形県目線だけでなく、全国的なネットワークの視点、県外の方々の視点、外国人の視点などについて踏まえる必要がある」(第1回会合)、「フル規格新幹線を整備することは目標ではなく、新しい山形を作るための手段である。山形の目指す方向性を定め、その次にフル規格新幹線の事業性を検討すべきだ」(第7回会合)。
それぞれ、まっとうな意見だが、こうした考えが報告書に反映されることはない。なにせ、ワーキングチームの設置を指示した吉村知事本人が「目標と手段」を取り違え、奥羽・羽越新幹線の実現に血眼になっているからだ。
県庁の内部では何が起きているのか。部長会議のメンバーに話を聞いた。一人は「フル規格新幹線の整備のことが部長会議で議論されたことは、記憶する限り、2期目の4年間で一度もない」と述べた。もう一人の述懐はより率直だった。彼は次のように語った。
「新幹線関係の予算が話題になったことはない。部長会議では報告事項が多く、政策論議が交わされることはまずない。予算編成にしても、下から積み上げていっても知事が『いらない』と言えば、それまで。そもそも、知事は県職員を信用していないのではないか。県経済同友会の朝食会などで吹き込まれたアイデアで動くことが多かった」
ブレーン不在の県知事の下、部長会議での議論もないまま、フル規格の新幹線整備促進の予算はますます膨らんでいった。2016年5月、県主導で市町村や経済団体で構成する「山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟」を立ち上げた。吉村知事の「オール山形翼賛組織」である(写真参照)。
この年から、実現同盟の運営やそのホームページの制作、シンポジウム開催の外注が始まる。表3にあるように、公募式の最初のコンペでこの仕事を受注したのは山形新聞グループの広告会社、山形アドビューロだ。業務には新聞広告の掲載やラジオでのPRも含まれる。知事が唱え、山形新聞がキャンペーン記事を載せ、グループ企業が広告の仕事を請け負う。同社の業務委託料は3年分で4000万円近くになる。
去年は吉村知事の義理のいとこ、吉村和文氏が率いるダイバーシティメディア(旧ケーブルテレビ山形)が1817万円で受託した。山形アドビューロとダイバーシティメディアの2社に支払われた委託料の合計は5700万円を上回り、これだけで約1億2千万円の新幹線整備事業予算の半分近くになる。
ダイバーシティメディアについては、今年の1月30日付のコラムで同社が県内周遊促進の観光キャンペーン事業を受注した経緯を詳しく報告した。県の仕事を取ってくるのが実にうまい。ちなみに、観光キャンペーン事業を担当したのは吉村和文氏の長男で同社取締役の和康氏である。2017年3月期の株主総会資料に書いてある。知事が発注し、義理のいとこが受注した仕事をその長男がこなす。「身内と取り巻きに温かい県政」の極みではないか。
フル規格の新幹線整備促進事業について、県の幹部が公然と異を唱えたことは皆無のようだが、職員全員が唯々諾々と知事の意向通りに動いているわけではない。情報公開で開示された2775ページの公文書の中に、かすかに抵抗の痕跡があった。
2015年度予算査定の「財政課長調整結果報告書」の参考欄に、次のような記述がある。「(フル規格新幹線の整備を求める)県の要望が認められたとしても、工事の着工は現在の整備計画が完了する平成47年(2035年)以降となり、さらに工事完成まで10年?30年を要すると想定される」(カッコ内は筆者が補足)。
わずか3行のメモ。だが、その行間からは「実現する可能性があるか疑わしい。仮に実現するとしても、30年から50年も先のことではないか」との思いがにじみ出る。財政をつかさどるプロとして、書き残さないではいられなかったのだろう。
県幹部の証言によれば、政策にしても予算にしても、2期目に入った頃から、吉村知事は自分の考えを強烈に貫くようになったという。自由に議論を交わし、より良い県政を進めていく雰囲気が失われて久しい。では、本人はどのような心境にあるのか。
ここは、吉村和文氏のブログ「約束の地へ」から引用したい。2016年5月8日のブログによれば、吉村美栄子知事は自らの後援会の総会で次のように挨拶した。「自分はこの7年間、ただ愚直に県民の皆さんの笑顔が見たい、県民の皆さんから幸せになってほしいという一心で走り続けてきた。県民の方としっかりと向かい合い、温かい県政を願い、作ってきた。これからも、みんなで心の通った山形県を作っていきましょう」
吉村知事が一生懸命、働いていることは疑いない。知事交際費の明細を見れば、よくある「宴会政治」とは無縁であることも分かる。災害の現場などにもよく足を運ぶ。温かさを感じる時もある。けれども、足元の県庁内ですら「心が通わなくなっている現実」を知事は自覚しているのか。
冒頭に記したように、吉村知事はブレーンを作り、助言を求めることをしてこなかった。自らと異なる意見を持つ人の声に耳を傾ける度量も乏しい。性格に加えて、大きい組織を率いた経験がないからかもしれない。在任が長くなるにつれて、それが「身内・取り巻き県政」の様相を呈し、度し難いほどひどくなってきた。
そのように批判されれば、本人は「人のあら探しばかりしていないで、自分ならどうするか前向きのことが言えないの」と反論するかもしれない。一人の元新聞記者としては、こう答えるのが精いっぱいである。
「時代の風に敏感でありたい。世界は、田中角栄氏が日本列島改造論を唱えた時代とは、まるで違うものになってしまった。地味ではあっても、人を育て、人を惹きつけるために力を尽くす時ではないか」
*この文章は、月刊『素晴らしい山形』の10月号に寄稿したものを若干手直ししたものです。
≪写真説明とSource≫
◎山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟の2016年総会。吉村知事と県内選出の与野党国会議員が山形市内のホテルで気勢を上げた(実現同盟の公式サイトから)
≪参考資料&サイト≫
◎奥羽・羽越新幹線整備構想に関して山形県が情報公開した文書
◎山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟の公式サイト
https://www.ou-uetsu-shinkansen.jp/
◎奥羽・羽越新幹線整備構想に関する山形新聞、河北新報の記事
その重圧は、時には耐えがたいほどだろう。だからこそ、優れた政治家は「ブレーン(知恵袋)」を持つ。経済や外交の専門家、情報のプロや文化人を抱え、折に触れてその知恵に頼る。そうしなければ、孤独に耐えられないからだ。
3期10年余りの吉村美栄子・山形県知事の県政運営を見ていて思うのは、「この知事にはブレーンがいない」ということである。ブレーンなき政治は何をもたらすか。6月29日付のコラムで取り上げた「フル規格の新幹線整備構想」はその答えの一つと言っていい。
政府も地方自治体も膨大な借金を抱えている。医療と福祉の負担は膨らむばかり。子どもが減り、高齢者があふれる社会でどのような道を切り拓いていくのか。私たちの社会は未知の海に漕ぎ出し、荒波を乗り越えて行かなければならない。
そういう時代に「東北に二つの新しい新幹線を造ろう」と呼びかけることがどれほど「お門(かど)違いの政策」か。フル規格の新幹線の建設費は1キロ100億円前後、100キロで1兆円もかかる。冷静に考えれば、中学生でも「とても無理な話」と分かる。
なのに、吉村知事には冷静にそう説くブレーンがいない。「フル規格の奥羽・羽越新幹線の実現」に向かってひた走る。地元の山形新聞も経済界も「オール山形で夢を叶えよう」と、熱にうかされたように叫んでいる。
新聞や経済人が叫ぶだけなら、何も問題はない。だが、県知事が唱えるとなると、話は違ってくる。新しい事業が始まり、県職員が走り回り、私たちの血税が費やされていくからだ。
吉村知事が2期目に入った2013年(平成25年)から、フル規格の新幹線整備運動のためにどのくらいの県費が投入されたのか。図1はその一覧グラフである。最初の年は「新幹線推進県民運動事業費」と名付けられ、202万円と小さな予算だった。それが翌年は484万円、翌々年は819万円と、倍々ゲームのように膨らみ続けた。
3期目初年の2017年(平成29年)には3162万円に達し、以後、ほぼ同額の予算が計上されている。総額1億2112万円。知事が唱え、地元の山形新聞があおり、市町村長や経済人も加わる「県民運動」に多額の県費が投じられた。
いったい、どのように使われているのか。その実情を調べていくと、嘆きは一段と深まる。表1は支出の主な内容である。2014年3月に山形市で、京都大学の藤井聡教授を講師に招いて初めてのシンポジウムが開かれた。教授は「フル規格新幹線の整備によってビジネスが生まれ、人が定着する。山形の人口減少に歯止めをかけるだけでなく、増加に転じさせることができる」と語った(同年3月21日付の山形新聞記事)。
その藤井教授は4年後の講演では「財務省は『山形にはミニ新幹線がある。まだ何もない四国や山陰に比べ、優先順位は低い』と言って簡単には(奥羽・羽越新幹線を)認めない」と語った。そこまではいいが、続いて「仙山線ルートに新幹線を通してはどうか」と、突拍子もない提案をした(河北新報の2018年9月3日付社説)。なんとも無責任な学者である。
それでも、講演会くらいなら費用は少なくて済む。予算が膨らみ始めたのは、2015年から外部の専門家を招いて「ワーキングチーム」を発足させ、フル規格の新幹線整備に向けて本格的な検討を始めたあたりからだ。旅費や謝礼で費用がかさむ。表2はそのチームのメンバー表である。運輸政策研究機構は旧運輸省系の外郭団体、エム・アール・アイリサーチアソシエイツは三菱総研系のシンクタンク、フィディア総合研究所は荘内銀行が作ったシンクタンクだ。
チームには、人口の減少を示す県内の地域ごとのデータや鉄道や空路、車を使った県民の移動データなどが示され、議論が交わされるのだが、情報公開された文書を読むと、データの膨大さに比べて議論があまりにも空疎なことに脱力感を覚える。誰も「実現の展望」を見出せないからだろう。
専門家らしい指摘もある。「山形県目線だけでなく、全国的なネットワークの視点、県外の方々の視点、外国人の視点などについて踏まえる必要がある」(第1回会合)、「フル規格新幹線を整備することは目標ではなく、新しい山形を作るための手段である。山形の目指す方向性を定め、その次にフル規格新幹線の事業性を検討すべきだ」(第7回会合)。
それぞれ、まっとうな意見だが、こうした考えが報告書に反映されることはない。なにせ、ワーキングチームの設置を指示した吉村知事本人が「目標と手段」を取り違え、奥羽・羽越新幹線の実現に血眼になっているからだ。
県庁の内部では何が起きているのか。部長会議のメンバーに話を聞いた。一人は「フル規格新幹線の整備のことが部長会議で議論されたことは、記憶する限り、2期目の4年間で一度もない」と述べた。もう一人の述懐はより率直だった。彼は次のように語った。
「新幹線関係の予算が話題になったことはない。部長会議では報告事項が多く、政策論議が交わされることはまずない。予算編成にしても、下から積み上げていっても知事が『いらない』と言えば、それまで。そもそも、知事は県職員を信用していないのではないか。県経済同友会の朝食会などで吹き込まれたアイデアで動くことが多かった」
ブレーン不在の県知事の下、部長会議での議論もないまま、フル規格の新幹線整備促進の予算はますます膨らんでいった。2016年5月、県主導で市町村や経済団体で構成する「山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟」を立ち上げた。吉村知事の「オール山形翼賛組織」である(写真参照)。
この年から、実現同盟の運営やそのホームページの制作、シンポジウム開催の外注が始まる。表3にあるように、公募式の最初のコンペでこの仕事を受注したのは山形新聞グループの広告会社、山形アドビューロだ。業務には新聞広告の掲載やラジオでのPRも含まれる。知事が唱え、山形新聞がキャンペーン記事を載せ、グループ企業が広告の仕事を請け負う。同社の業務委託料は3年分で4000万円近くになる。
去年は吉村知事の義理のいとこ、吉村和文氏が率いるダイバーシティメディア(旧ケーブルテレビ山形)が1817万円で受託した。山形アドビューロとダイバーシティメディアの2社に支払われた委託料の合計は5700万円を上回り、これだけで約1億2千万円の新幹線整備事業予算の半分近くになる。
ダイバーシティメディアについては、今年の1月30日付のコラムで同社が県内周遊促進の観光キャンペーン事業を受注した経緯を詳しく報告した。県の仕事を取ってくるのが実にうまい。ちなみに、観光キャンペーン事業を担当したのは吉村和文氏の長男で同社取締役の和康氏である。2017年3月期の株主総会資料に書いてある。知事が発注し、義理のいとこが受注した仕事をその長男がこなす。「身内と取り巻きに温かい県政」の極みではないか。
フル規格の新幹線整備促進事業について、県の幹部が公然と異を唱えたことは皆無のようだが、職員全員が唯々諾々と知事の意向通りに動いているわけではない。情報公開で開示された2775ページの公文書の中に、かすかに抵抗の痕跡があった。
2015年度予算査定の「財政課長調整結果報告書」の参考欄に、次のような記述がある。「(フル規格新幹線の整備を求める)県の要望が認められたとしても、工事の着工は現在の整備計画が完了する平成47年(2035年)以降となり、さらに工事完成まで10年?30年を要すると想定される」(カッコ内は筆者が補足)。
わずか3行のメモ。だが、その行間からは「実現する可能性があるか疑わしい。仮に実現するとしても、30年から50年も先のことではないか」との思いがにじみ出る。財政をつかさどるプロとして、書き残さないではいられなかったのだろう。
県幹部の証言によれば、政策にしても予算にしても、2期目に入った頃から、吉村知事は自分の考えを強烈に貫くようになったという。自由に議論を交わし、より良い県政を進めていく雰囲気が失われて久しい。では、本人はどのような心境にあるのか。
ここは、吉村和文氏のブログ「約束の地へ」から引用したい。2016年5月8日のブログによれば、吉村美栄子知事は自らの後援会の総会で次のように挨拶した。「自分はこの7年間、ただ愚直に県民の皆さんの笑顔が見たい、県民の皆さんから幸せになってほしいという一心で走り続けてきた。県民の方としっかりと向かい合い、温かい県政を願い、作ってきた。これからも、みんなで心の通った山形県を作っていきましょう」
吉村知事が一生懸命、働いていることは疑いない。知事交際費の明細を見れば、よくある「宴会政治」とは無縁であることも分かる。災害の現場などにもよく足を運ぶ。温かさを感じる時もある。けれども、足元の県庁内ですら「心が通わなくなっている現実」を知事は自覚しているのか。
冒頭に記したように、吉村知事はブレーンを作り、助言を求めることをしてこなかった。自らと異なる意見を持つ人の声に耳を傾ける度量も乏しい。性格に加えて、大きい組織を率いた経験がないからかもしれない。在任が長くなるにつれて、それが「身内・取り巻き県政」の様相を呈し、度し難いほどひどくなってきた。
そのように批判されれば、本人は「人のあら探しばかりしていないで、自分ならどうするか前向きのことが言えないの」と反論するかもしれない。一人の元新聞記者としては、こう答えるのが精いっぱいである。
「時代の風に敏感でありたい。世界は、田中角栄氏が日本列島改造論を唱えた時代とは、まるで違うものになってしまった。地味ではあっても、人を育て、人を惹きつけるために力を尽くす時ではないか」
*この文章は、月刊『素晴らしい山形』の10月号に寄稿したものを若干手直ししたものです。
≪写真説明とSource≫
◎山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟の2016年総会。吉村知事と県内選出の与野党国会議員が山形市内のホテルで気勢を上げた(実現同盟の公式サイトから)
≪参考資料&サイト≫
◎奥羽・羽越新幹線整備構想に関して山形県が情報公開した文書
◎山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟の公式サイト
https://www.ou-uetsu-shinkansen.jp/
◎奥羽・羽越新幹線整備構想に関する山形新聞、河北新報の記事